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渡されたのは、さっき二人が持っていたジャージだった。
黒のジャージの背中に白い龍が縫い付けられている肩には…ひよこ?
「どうしたんだ?これ?」
俺は急な展開に頭がついて行けなかった……いやまぁいつものことだが…
「さっき言ったでしょ!ジャージ部の入部祝いよ!」
かなり恥ずかしいのかそっぽを向いている。誰にしゃべってんだよ。
「【皆】がジャージ部に入ったと聞いて嬉しくてのぅ。2ヶ月前から準備してたのじゃ!試合用のジャージで背中がワシが、片の刺繍が【彩乃】じゃ!…気に入ってくれたかのぅ?」
「べ、別に気に入らなかったら捨てても良いのよ!こんなの、適当に作ったんだから。!!!」
「おやー?普段お世話になってるし何か送ろうと提案したのは【彩乃】じゃ無かったのかのぅ」
「ちょっと、【一香】!!!」
そう言いながら【一香】の口をふさぐ【彩乃】の手はよく見るとキズだらけであちこち絆創膏を貼っていた。
俺は急に目頭が熱くなり何かが頬を伝う。
こいつが縫いもんなんて想像つかねぇよ…
恐らく【一香】から教わって必死に縫ったんだろう。
そう思うと、次から次へと熱いものが頬を伝っていき止まらない
それは下らないジャージ部の為とか、試合用のワケわからないジャージのためにとか…そんなことどうでも良いと思うくらい、俺の中には、何とも言えない気持ちが溢れていた。
「あ、ありがど…うっ」
「ば、泣いてんじゃ無いわよ…そ、そんなに嬉しかったの…まぁ【彩乃】様からのプレゼントなんだから当然ね!感謝しなさい!!」
憎まれ口を叩きながらも【彩乃】の顔は嬉しくてたまらないのを必死で隠してるのがわかる。
「良かったのぅ。【彩乃】」
そう言う【一香】自信もとても嬉しくそうだ。
「ほら、いつまでないてんの、試合にはそれ着てでなさいよ!」
「うむ、似合うと思うぞ!」
「あぁ…絶対…ありがとうすっげぇ気に入ったよこの…」
二人は嬉しそうにうなずく。
俺も負けないくらい満面の笑みを返した。
「この龍とひよこ!!」
「鳳凰だ大ば皆!!!!!!!!!!!!!」
その瞬間俺の満面笑みはどこぞの有名絵画のごとく崩れさっていた。
「しんっじらんない!!いくわよ【一香】!カレーが冷めるわ!」
「そうじゃのぅ…色々と冷めとるのぅ」
薄れゆく意識の中【一香】の苦笑いと【彩乃】の般若がおだけが鮮明に残っていた。
第一章 ―完―
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