屋上コミュニティー

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 出遅れた。ついでに孤立した。  私がそう気づいた時にはもう、色々と手遅れだった。  窓際の席で弁当箱を抱えたまま、ぼんやりと雨音に耳を澄ます。  まだ五月だというのに、今日の最高気温は六月の下旬並みまで上がるとテレビで流れていた。湿気のせいでやけに蒸し暑く感じてしまう。  そもそもの孤立の原因は、交通事故だった。  中学を卒業し、後輩達よりも数週間早く訪れた春休み。私は暇を理由に、近所を漫然とそぞろ歩いていた。  仲の良かった友達に会えないかなーとか、素敵な出会いでも落ちていないかなーとか、そんな浮かれた事を考えていたわけでもなく、本当にただ、暇とお友達ごっこをやっていただけだった。  そして私は、暇と不幸に愛されていたらしい。  古書店の前の横断歩道を渡ろうとした時、私に軽自動車が突っ込んだ。  か弱いか弱い、女子中学生だか女子高生だか肩書が曖昧な時期を過ごす私に、容赦なくその硬い身体をぶつけてきたのだ。  当たって砕けろとはよく言うが、砕けたのは私の肋骨だった。全治一ヶ月。むしろ、軽とはいえ自動車に撥ねられてよく一ヶ月で済んだな、という話である。  入院生活自体は三週間ほどで終わったが、その三週間もまた暇と一緒に過ごす日々。  当然高校の入学式には出席できず、初登校も他の新入生より一ヶ月ほど遅れてしまった。  そしてその一ヶ月というのは、常に集団生活を強いられる環境でのスタートにおいて、とても重要な期間でもあった。  致命的なことだが、私は人付き合いが苦手だ。人見知りが激しく、友達を作るのも下手糞。会話をする時はいつも聞き手だし、そもそも友達を欲しいとあまり思えない。集団行動に向いていないというのは良く理解している。
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