冬、中学、本屋

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そんな人の来ない本屋を営むだけで生活していけるほど、世間は甘くない。 お陰で母はパートでスーパーに勤めているし、父はアルバイトで始めたはずの土木作業員が、本職の本屋と逆転してしまっている。 よって、私が学校から帰ってから本屋を開け、休日には私が1日店番をするのは中学生に……いや、小学5、6年生の頃には日課になっていた。 そうやって振り返ると、昔はもう少しこの商店街にも活気があった覚えがある。郷愁にも似た感情が湧き出るほどだ。 人も、建物だってもっと綺麗にイキイキしていたように思う。 歳の離れたお姉さんやお兄さんは私の相手をしてくれた。今はもう大学に行っているから、商店街にいる若い人なんてもういない。 会うたびに飴をくれたおばあさんだって、一昨年に亡くなった。 建物だって、明るく輝いて見えたペンキ塗りの看板達はペンキが剥がれて色を失い、閉まっていても明るかったシャッターは錆び付いて汚れ放題。
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