冬、中学、本屋

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「店に入った時にはもう寝てて寒そうだったから………」 この辺りの学校じゃ明らかに校則違反な髪の長さ。男の子が読む雑誌みたいに整えられているわけじゃなくても、でも似合ってて。 私が知る『男子』とは全然違う立ち振舞いや落ち着き。 ファッションだって大人びてて。 「……で、本を見てたんだけど……聞いてる?」 「え?…あっ!?すいません!」 彼が苦笑いしながら本をカウンターに置く。 ああ、もう本を買って帰ってしまうんだ。 「それと、コート返してもらっても構わないかな…?」 その言葉に、私は足りない知恵を無理矢理働かせて。 無意味な抵抗と分かっていても。 「ゆ、床に落として汚しちゃいましたし……せ、洗濯してお返しします!」 彼は人の気持ちもしらないで、柔らかい笑みを浮かべる。 「大丈夫だよ。気にしないから」
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