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「優しいですよ。お客様は…、あ、お礼を言ってませんでした。ありが…」
「邪魔だ邪魔っ!!」
お礼を述べようと男がお辞儀した瞬間丁度後ろを通った他の客に蹴られるようにぶつかられ、その反動でそのまま突っ伏したような格好で倒れている。
ぶつかって言った男は此方をチラリとも見ないでそのまま歩いていってしまった。
「……(あの男…)、おい大丈夫か?」
手を差し出し、助け起こすと先程の客の行方を視線で追っていると助け起こした相手の視線を感じ顔を向けた。
「…何?」
「いえ、やはりお客様はお優しいかただなぁと思いまして」
「…違うって言ってるのに。それよりアンタもっと怒りなよ?アイツぶつかったのに謝りもしてない」
その言葉に対してこのお気楽な男は未だに優しげな笑みを浮かべている。
「いいんですよ。大した怪我もしてないですし、助けて頂きましたし」
そう告げる男の言葉にピクピクとこめかみの辺りが震えているのが解った。
「そう…。じゃあ今からすることは俺の勝手だからアンタは口出しするなよ」
そう告げると男の手を掴み歩き出した。
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