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「こちらのお客様の勝ちでございます…。」
ディーラーの透き通った声が、勝敗を告げた。
「…俺の勝ちだね」
クッと喉を鳴らして唇の端を歪めると、隣に座っていた男はわなわなと震えながら立ち上がる。
「…っ!!そんな馬鹿なっ!!最初からコイツのカードは揃っていたというのか!!……そうか、お前らグルなんだろう!!」
俺とディーラーの二人を交互に指差し、さらに声を荒げて続ける。
「…イカサマだ。こいつ等イカサマしてやがるっ!!」
「はっ、イカサマだって?どうでもいいが、俺の勝ちは決まったんだから、礼儀を覚えて貰おうか」
「うるせぇ!!そんな賭けは無効だっ!!」
言うなり男は手元に持っていたチップのコインを投げつけてきた。
「…っ痛!……この下衆(ゲス)が…っ」
投げられたコインが眼の下辺りの頬を掠め、少し血が滲む。
そして、更に憤慨した様子の男はこちらに手を伸ばし、俺の胸倉を掴もうとした瞬間。
「…お客さま。これ以上は、ご遠慮願います。」
先ほどまで後ろに立っていたと思った男は、優しく携えてた笑顔が消え無表情で俺の前に立っていた。
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