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【Gold.】に着くと誰かを探すように辺りを見渡す。
「黒髪くんなら、もう先客だよ」
言葉と同時に視線を梛由汰が見ている先に移す。
瞬間、胸がツキンと痛んだ。
「…っ、だ、…れ?あれ…?」
「見た通り。君がここに寄り付かない間に彼を気に入ったお客様」
見詰める先で、誘うような視線をあの人に向け当然のように隣に立ってる。
ドクン…と体の中で何かが鳴っている。
…――やめろ、抑えろ。
ジッと逸らすことも出来ず二人を見詰めると、視線を感じたのか客の方が俺に気付いた。
その視線を追って、深い緑の瞳が俺の姿を映した。
「…っ(…なんて、なんて表情(カオ)で…、そんな優しく…)」
綻んだ顔を見せる彼に思わず顔が上気する。
慌てて顔を逸らすと、彼の隣にいる男が言葉を発する。
「……閑のほっぺって、物凄く柔らかそうだよね?…食べちゃいたい」
「…え?お客さ…」
男の言葉に反応するように顔を上げ二人を見る。
瞬間、目の前が紅くなる。
―――ダメダ。ソレハオレノダ。
、 、、モウ…
――オ サ エ ラ レ ナ イ 。
「…え、音ちゃん?」
梛由汰の声は俺の耳には届かなかった。
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