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「お帰りなさいませ。音様…、お一人ですか?」
「…ああ」
梛由汰の屋敷の使用人に声を掛けられるが俯いたまま端的に返事をすると自室へと入る。
ドアを閉めそのままズルズルと崩れる様に座り込む。
「……ぁっ、…っ、……あ…っ……っあ」
もういい。
もう、我慢しなくていい。
涙が止めどなく流れ、嗚咽が漏れる。
脳裏にあの優しい笑顔が浮かんだ。
『お客様』
「……ぁ…ぅ、…しずか……」
『ありがとうございます』
「…ふぅ…ぅっ…、しずか…ぁ…」
『お客様は可愛らしいですね』
「…あ、っ…か、…ずか……」
苦しい、苦しい。
もう、会えない。
もう、聞けない。
大好きだ。
好きだよ。
…………愛してる。
だから、さよなら。
そこでブツンとテレビのように俺の意識が途絶える。
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