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シーツを被りベッドの端で膝を抱える。
カチカチと歯が震え音を立てる。
「……怖い。眠るのが怖い。」
見たくない。
あの夢は見たくない。
あれは嫌だ。
震える手を見詰める。
「……あ、なんで。なんで…紅い紅い紅い紅い紅い紅い紅い」
手がヒリヒリするほどシーツで擦る。
「…とれない。なんでなんで。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」
頭が割れるように痛い。
胸が引き裂かれるように痛い。
「…どうやったらとれる?…はぁっ、はぁっ、……っく…はぁっ…はぁっ」
駄目だ。
余り騒ぐと梛由汰に知られる。
アイツが来たら眠らされる。
嫌だ。
あの夢は嫌だ。
あの場所には戻りたくない。
「………窓。」
ヨロヨロと体を起こし窓を開ける。
まだひんやりと冷たい風が頬を撫でた。
体力の無い躰を懸命に動かし、窓から外へと逃げ出す。
使用人達に見つからないように正門へ行き通りかかったタクシーに乗り込んだ。
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