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「……皮肉なものだな。結局、ここに来るなんて…」 キラキラと光る建物を見上げ目を細める。 タクシーに乗り込んだ後、普段何処に行くのも一人でなかったのと急いで離れたかったせいで行き先をつい、【Gold.】と言ってしまった。 二度と来ないと告げた手前、彼にだけは見つからないようにしなければ。 ここのところ暗い部屋にずっと引きこもっていたからなのか、カジノの電飾にクラクラと、頭が揺れる。 「……何処か、休むとこ…ろ……」 何日も眠っていない体を急に動かしたものだから体がふらつく。 「……(駄目だ。…倒れる…)」 「…音夜さん?」 耳に聞こえた声に体がビクリと反応する。 「……なんで(…よりよってアンタが見付ける)」 「だ、大丈夫ですか?酷い顔色…」 「……あれだけ、言ったのに。……(…駄目だ。これ以上意識を保ってられない)…今からのこと、全部忘れろよ。……も、限界…」 「え?音夜さ…」 ホッとしたように体を投げ出し閑の胸へと崩れ落ちた。 そして再び意識はクルクルと落ちていく。
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