41人が本棚に入れています
本棚に追加
/77ページ
………あったかい。
ゆっくりと重い瞼を押し上げる。
ぼんやりとした視界が徐々に鮮明になり、涙でまた滲んでいく。
「……なんて、都合のいい夢なんだろう。…だって目の前に閑がいる」
目の前にいる閑が俺を抱きつつんでいるなんて。
なんて都合のいい残酷で優しい夢。
こんな夢を見せてまた、あの夢に連れ戻すの？
なんて酷いんだろう？
……でも、いいや。
今はこの夢を見ていたい。
こんなに心地いい夢は初めてだから。
「……夢なら触れてもいいかな……。いいよね？」
目を瞑った相手の柔らかな頬を手のひらでソッと触れる。
「……あったかい。夢じゃなきゃいいのに……」
「…夢じゃありませんよ」
ゆっくりと開いた瞼から、深い碧の瞳が覗き真っ直ぐに俺を見詰める。柔らかな頬に触れている手が大きな手で包まれ優しく絡められた。
そこから温かい感触がじんわりと伝ると共にゆっくりと染み入るように涙が溢れる。
夢じゃ…、ないの…？
現実に起こるわけないのに？
.
最初のコメントを投稿しよう！