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俯いてる俺の目を俺より少し大きな手が覆う。 (…な、何?何をしてるの?) 少しだけ閑が近くなった気がするのに、視界は塞がれているから何をしているのか解らない。 暫くすると覆っていた手が外され見上げると先程と変わらない閑の柔らかい笑顔があった。 ジッと見詰めたあと少しだけ、スリ…と頬を閑の胸に擦り寄せる。 「……絶対、忘れろよ」 此処へ来て倒れる直前に言った言葉を思い出した。 今だけ…、今だけでいいから、この夢のような幸せな時間を過ごしたい。 「……何故ですか?」 閑の問いにゆっくりと顔を上げると、少しだけ哀しそうに眉を下げて微笑む閑の顔が目に映る。 「………アンタ、大事なヤツがいるだろ?…それに、もう二度と会わないって言ったし。………だから、俺に会ったことは忘れろ。こうやってる事も」 甘えるように俯いてまた頬を擦り寄せる。 「……僕、記憶力いいんです。だから、忘れるなんて出来ません」 「…駄目……。忘れるように努力しろ。…でないと、ずっとこうしてろって言うよ?」 クス…ッと薄く自嘲気味に笑みを浮かべる。 こんなこと言っても困らせるだけなのに。 「………いいですよ?…貴方が望む限りずっとこうしてます」 また、そんな残酷なことをサラッと言う…。 「………出来ないこと言うな。アンタの大事なヤツが可哀想だろ…。…それでも言うなら…一生って言うよ?」
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