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ドキドキする
どうすればいいのだろう
無理やり押しのけるのは余りに大人気ない
けれど彼の背中に腕を回すのは
何だか違う気がする
奏は腕にますます力を込める
彼からいい匂いがした
何だっけこの香り
知ってる
確かに知ってる
何処で……
『蓮……』
奏が囁く
「な、なに……?」
声がかすれる
『また、アムステルダムに来る?』
「え?……ど、どうかな……」
『また、逢える?』
こんな状況でこんな甘いセリフを囁かれて
いったい何て答えればよいのか全くわからない
けれど
その想定外の事態が蓮を思いがけずロマンチックにしていく
「きっと、逢える……約束する」
自分でも驚くような言葉がツラツラと出てきた
『よかった……逢いたかった、逢いたかったよ蓮……』
「えっ……?」
逢いたかった……?
どういう意味?
情けない事に蓮の想定外はここで許容範囲内を越えてエラーが出た
頭も目の前も真っ白になる
ただ
奏の呪文のような囁きに運河の15番目の橋が霞んで消えていくのは覚えていた
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