動き始めた歯車

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出逢いとは本当に不思議なものだ それが男と女になれば尚更そう思う いつの間にか 自分の心の大きな部分を支配されている場合があるかと思えば ほんの一瞬で虜にされてしまう事もある 彼は 私の心の「恋」や 「男」という扉とは別の入り口からいつの間にか入ってきて ジワジワと潮が満ちていくように 気がつくと心の中は彼で溢れていた 出逢うべくして出逢ったのか 間違いだったのかは分からない 彼、黒田 啓吾は大阪支店から私達のチームに移動してきた 蓮は大阪支店と聞いただけでなんとなく気分に影がさしていた しかも黒田は輸入住宅部門でずっとカナダにいたらしい 大阪支店に転勤になり一年程でウチのチームに飛ばされてきたのだ エリート……なのに 何があったか知らないが訳ありな事には違いない 月曜の朝には全体朝礼が行われる その朝礼で移動になってきた数人が紹介された 黒田 啓吾 が紹介され私達のチームに配属と所長が言うと周りは少しざわついた 親友の瞳が耳打ちしてきた 「大阪で社内の女の子妊娠させたとかで揉めたらしいよ……」 「妊娠……」それはそれはご苦労様な事だ でも自殺未遂よりはずっとマシな気がするけど 「妊娠説は女のでっち上げらしいよ」 そういったのはガウディ工藤だった 「そうなの?」と瞳は食い付く 「黒田は確かに女に手は早いけど、ドジを踏むようなヤツじゃないよ……仕事も出来るしね……」と、眼鏡をキュッと上げながら図面から目を離さずに工藤は無表情に言った 「へぇ……」めったに人を誉めたりしない工藤がそう言った事に蓮は驚いた 「イケメンですよね」 新人の斎藤君が耳打ちしてくる 「そうかな……斎藤君の方がカッコいいよ……」蓮は今日のスケジュールに目を落としながら適当に答える 「マジっすか!?」 デカい声を上げる 「しーっ!声がデカい!」 「早川君、早川 蓮君」 所長に突然、名前を呼ばれる 「ちょっと、怒られたじゃん……」斎藤を肘でつつく 「スイマセン……」 と斎藤君
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