動き始めた歯車

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何故、この男と一緒にお酒を飲まねばならないのか 断る事は出来た そもそも、蓮は外でアルコールを飲む時は1人で飲むと決めている 理由はふたつ 1つは一緒に飲む人がいない事 もうひとつは医者からアルコールは止められているから 薬との相性が最悪なのだ チームのみんなもその事を知っている だから みんなで打ち上げなどに行っても私が飲まないように監視されている 常に 「昨日、飲んでないだろうな」とチーフに言われる ウザい でも、有り難いとも思う そんな蓮が黒田の誘いに乗ったのは 出来上がった図面が見たい それだけだと その時は思っていた 行きつけのバーと言えばちょっとカッコ良いが 正直なところココしか知らない 長いカウンターと4つ程の小さなテーブル 内装は古いイギリスのバーを真似たような本格的な造り ドアは一目でアンティークを使用しているのがわかる 黒田はまず、この扉に食い付いてきた 「へぇ~こんな扉、よくさがしてきたな……」 それには答えず店に入る 「レン!イラッシャイ」 「ジミー、久しぶり」 褐色の肌にしなやかな筋肉、深いグリーンの瞳の彼は当たり前のようにハグしてきた 「あらっ、蓮ちゃんご無沙汰だったじゃない」 「こんばんは、ママ」 カウンターの背の高い椅子に座るとジミーが綺麗な黒猫のように 黒田と私の間にスルリと入り込み 「レン、イツモノデイイ?」 「うん、いつものハーフ&…」 「ハーフ……ネ」と言って妖艶に微笑んだ 「お連れの方は?」ママが黒田に聞く 「え?……あっ……同じもので……」 完全に固まってしまっている黒田を見て蓮は可笑しくてたまらなかった 全くザマァ見ろだ 「ちょっと、蓮ちゃん……コチラのイイ男、誰よ?まさか……」 「会社の新入りよ」 隣で黒田がムッとする 「へぇ~……こんなイイ男いたのね」舐めるようにママは彼を見ながら値踏みしている 会社ではまるで傷だらけの一匹狼みたいに牙を剥いていたヤツは猫に取り囲まれたハムスターのようだ
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