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この店はママを始め全員が男
いわゆるゲイバーと呼ばれる店だが
そこいらのオカマバーとは違い海外で修行したようなちゃんとしたバーテンダーを置いている
そして彼らはオカマではなくゲイ
ママの一番のこだわりは綺麗な子しか置かない事らしい
一見したら女の子が喜びそうなイケメンしかいない
ママ自身もヒゲの似合う彫りの深いかなりの美男子だ
黒田はひたすら落ち着かない様子で
「いつもこんな店で飲んでんの?」
蓮は目の前に出された
透明な黒い液体にカフェラテ色の泡がタップリと乗ったハーフ&ハーフを一気にあおった
「そうよ。悪い?」
「別に……」
「早く図面、見せなさいよ」
「はぁ?」イラッとした顔でまた睨んでくる
「黒田、アンタ私より後輩よね?生意気な事を言ったらこの店に売り飛ばすわよ」
「お前……シバいたろか?」
黒田の怒りの声は蓮には届かなかった
手にした図面に釘付けになっていたのだ
ザックリ
と彼が言った通り
その図面はキッチリッした設計図ではなかった
けれど蓮の書いたつたないイラストに骨や肉が付けられ建物として存在していた
自分の書いた物を初めて形にしてもらった感動と興奮で動悸が激しくなる
「どう?……何とか言えよ」
「ママ……おかわり頂戴」
「おい!コラッ…マジでシバくど!」
二杯目のハーフ&ハーフと一緒に
ポケットから取り出したピルケースに入った薬を流し込む
こうでもしなければ冷静でいられないほど気分が高揚していた
「ちょっと、蓮ちゃん……アンタ今……またやったでしょ!」
黒田は怪訝そうな目でママと蓮をこうごうに見ている
「大丈夫……いつもの事よ」とカウンターごしにママを睨んだ
それから何杯おかわりをしたのか、黒田とどんな会話をしたのかは一切
蓮の記憶にはかなった
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