恋はしない

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いつもの白い手 淡いピンクのブラウス 不意に誰かの手がその肘から下しかない腕を掴んだ と、同時に自分の腕を掴まれる あっ…… 奏? 彼は柔らかく微笑み 「蓮、逢いたかった」 「私も……私も逢いたかった……」 スッポリと腕の中に抱きすくめられる あぁ……幸せ…… でも何か違う…… ん? タバコの匂い? 「アホか」 優しく微笑む奏がいきなり言った 「え?」酷い頭痛と共に目を開ける 蓮は自分の部屋のソファにいた そして、この上なく不機嫌な黒田が見下ろしている 頭がグヮングヮンと音をたてる 「アンタ、なんでここにいるの……」 黒田は舌打ちすると呆れたように 「飲み過ぎやねん!ちゃんと連れて帰ってきたからなっ……ほんならなっ……」 「ちょ、ちょと待って……」 ウンザリしたように振り向く 「ねぇ……ベッドまで連れて行って……」意識が朦朧としてくる シバく……と、啓吾は言いかけたが蓮の様子がおかしい 「おい……コラッ、大丈夫かいな?……おいっ!」 仕方ない 両腕を持って背中に背負う 「重い……」 リビングから半分だけ壁で仕切られた部屋にセミダブルのベッドがあった 啓吾はまるでゴミでも捨てるように蓮を投げ出した それにしても 一人暮らしの女の部屋にしては豪華なマンションだな 多分、賃貸じゃなく分譲だろう 改めて部屋の中を見回す ここ以外にもうひと部屋ありそうだ 2LDKか…… しかも、この寝室の造りはリフォームされている コイツ何者だよ…… ふと、リビングにある大きな硝子瓶が目にとまる 「なんだこれ?」 大量の薬が入っている その瓶の中に薬局でくれる薬の名前や働き、注意事項が印刷された紙が一緒に入っていた 「ふぅ~ん……最近はこんなんくれるんだ……」 ところが 次の瞬間、啓吾は凍りつく
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