恋はしない

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蓮は目覚ましなどなくてもほぼ毎日、同じ時間に起きる事が出来る 常に眠りは浅く数時間しか眠れずに覚醒してしまうからだ 薬など効かない だからアルコールを飲む 毎日の事ながら今朝の頭痛は酷いものだった ベッドの足元には脱ぎ散らかした服が 深いため息をついて、とりあえずシャワーを浴びる 薬を口に放り込んでペットボトルの水を一気に半分ほど飲む カーテンをあけると東の空が淡いオレンジと深いブルーの層を作っている 蓮はこの夜明けの瞬間が大好きだった 1日が終わって見る星空より 夜が明けた空を見るとホッとする また、ひとつ夜を越える事が出来た そう思う事が 自分への最大のご褒美だと考えるようにしているからだ マンションの最上階 超高層というわけではないが17階からの眺めは悪くない 何より最上階ならではの広いベランダがあるのが最高に気に入っている 蓮の月給でこんな物件が買えるわけがない 母の死亡保険金を父が全額くれたのだ その金額はこのマンションを買ってもまだ十分にお釣りがくる程の大金だった 娘に対する罪滅ぼしなのか 単に必要ない金だったのか 蓮は 必要ないお金だったからだと思っていた 父親に罪の意識などない 物欲のない人 仕事が人生の全て でも 妻や娘より大切な女がいた 蓮は頭の中の嫌なモノを振り払うようにブンブンと首を横に振った そして それを見つけた テーブルの上に走り書きされた紙が しかも、その紙は蓮が描いたデザイン画の裏が使われていた 『この貸しは3倍にして返してもらう!どアホ! クロダ』 何これ……? クロダ……? え?……あっ…… 慌てて寝室に戻って、脱ぎ散らかした数々の物を見る ようやく全て、いや一部だけ思い出した 黒田と一緒にバーに行きハーフ&ハーフを飲んだ事だけはハッキリと思い出した
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