恋はしない

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最悪 とは、きっと今のような事を言うに違いない 蓮はいつもより一本早い電車にのり、まだ完全に覚醒しない頭のまま会社へ急いだ とにかく 黒田よりも先に到着して彼が出社したら、いの一番に昨夜の事を謝らなければいけない どうしても思い出せない蓮は、早朝からバーのママを電話でたたき起こし詳細を聴いて愕然とした ママいわく 『蓮ちゃん、アンタいい加減にしなさいよっ!お連れの方がマンションまで持って帰ってくれたのよ……まったく……ちゃんとお詫びするのよっ!』 こんな事は初めてではない蓮はママにマンションのスペアキーを預けていたのだ なんてこった…… よりによってあの男に しかも あの服は自分で脱いだのか 脱がせてもらったのか? とにかく 大人の女としてあるまじき姿を晒してしまったのだ どんなに罵られようが、バカにされようが…… ひたすら、謝るのだ。 早めに着いたオフィスのフロアには人は殆どいない ウチのチームも誰も来ていない 「良かった……」 思わず胸をなで下ろす 「良くねぇよ」 心臓がドキリと音をたてて一瞬止まる 鍵をクルクルと指先で回しながら黒田が製図デスクの影から立ち上がった 「あっ……あっ、おはよう……ございます」 蓮は焦ってしどろもどろになる 「それで……?」 「あの……昨日は、その……ご迷惑かけたみたいで……」 「それだけ?」 「申し訳ありません……でした……」 ハイ……と黒田はアッサリと部屋の鍵を返してくれた ちょっと拍子抜けする 「本当にごめんね……」蓮は素直に謝った 「まぁ、いいよ……オッパイ見せてもらったしさ」 「え…………?」 「何を見せて貰ったって?黒田、オマエもう早川ちゃんのオッパイ見たの?」 工藤が呆れたように言ってきた 「違うわよ……見せてない……見せてないから!」 「黒田……お疲れさま」哀れむような顔で工藤はメガネを上げる 「まったくだ……」 そう言って黒田は蓮を睨んだ
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