恋はしない

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「どうしよう……」 「何が?」 蓮は啓吾と相も変わらず例のバーに来ていた 昼間の事件 坂井チーフは笑い飛ばしてくれたが 社内で人を殴ったとなれば 理由はどうあれ下手をすれば警察沙汰だ 「だって、私が殴った彼は同期なのよ……」 「殴られるような事をしたんだから仕方ない……だろ?」 「ゴメン……みんなに迷惑かけたわ……」 「ははっ……今更だろ。それに蓮がやってなかったら俺がシバいてた」 蓮……って そんな、いきなり名前でよばれても…… ちょとドキドキする 「あの噂はホントのところはどうなんだよ?」 単刀直入に聞いてくる 「ホントよ……坂井チーフの事以外は全部ホント」 「ふぅ~ん……それより今度の休みに新しい分譲地をチェックしに行こうぜ」 「え?もう私の話しは聞かなくていいの?」 「うん。昔に何があったなんて関係ないだろ?今は俺の大事だパートナーなんだから」 蓮はパートナーと言う響きに酔いしれる 「だから右手は大切にしろ」 啓吾が自分にとって どんな存在なのかをハッキリ言葉に表す事は出来ない それは 言葉にしたとたん儚く まるで目の前にあるビールの泡のように消えて なんとなく飲む気になれなくなりそうで 本当は気付いている 彼、黒田啓吾の事を男として意識し尊敬している でも それ以上は進めない 「あーあ……赤く腫れてるなぁ」 啓吾が私の右手をソッとさする 止めてください と、蓮は心で静かに呟く 黒田君、あなたとは仕事のパートナーでいる事が多分、一番よいの もし 例え好きになったとしても私はその気持ちは抹殺します 恋はしないの 恋をするのは怖いのです ズキズキする右手がどんどん甘くなっていく
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