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甘い気分は一晩のうちに消えていく
予想はしていたが
翌朝、会社に着くなり好奇の目で見られる
それは大阪で不倫騒動を起こした時とまるで同じだった
エレベーターでの微妙な空間
混み合っている社員食堂で
私の周りだけ不自然に空いている席
透明のバリアが出来ている
しかし
彼はお構いなしにそのバリアを蹴破って入ってきた
「お~ここだけ空いてるじゃん」
わざと大きな声で言って黒田は右隣に
一緒の工藤は向かいの席に座る
迷惑をかけた上に余計な気遣いをされる程、いたたまれなくなる事はない
「私の傍に近寄らない方がいいわよ……」
「まぁまぁ、いいじゃん」
と、工藤が器用で綺麗な手でお箸をパクパクパクッと動かす
「まだ、腫れてるな……可愛そうに……」
黒田は
蓮の右手を自分の手に取りわざとらしく擦った
全身が熱くなる
「オマエ、それはヤリ過ぎ……」
工藤が冷めた目で箸をパクパクさせた
「そんなことないさ、蓮は俺の大事なパートナーなんだから」
また蓮だなんて……
「蓮?今、蓮って言った?……早川ちゃん、オッパイ見せたのホントだったんだ?」
工藤が
箸で眼鏡を上げて身を乗り出した
蓮は慌てて右手を引っ込める
「見せてません」
「見たよ」
「まぁまぁ、それより昼からミーティングしたいな模型造り始めたいんだよね」
と、工藤はさりげなく仕事に話題を持っていく
こういった気遣いに蓮は何度も救われてきた
「ごめん、私……人事から呼び出されてるの」
「マジで?昨日の事?」
「うん……多分ね」
黒田がとたんに不機嫌な顔になる
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