おぼえていますか?

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「何か用事?」 「いや……どうだ?アムステルダムは……」 「今、何時だと思ってるの?」 「朝だろう、確か日本との時差は8時間くらいだろ?」 なんだ……知ってるんだ 「今回は何名の方が参加されているんだい?」 「私を入れて10人いつものメンバーよ」 「そうか……やっぱり10名か……」 父のこういうところが私をいつもイライラさせ そして ガッカリさせる どうして、もっとハッキリと物事を言わないのだろう 7年前 母が亡くなった時もそうだった 「用事がないなら切るわよ」 「あ、あぁ……気を付けて帰って来なさい」 「じゃあ……」 「あぁ、蓮……」 「何?」 「アルコールはあまり飲むなよ……」 「飲んでないわよ!」 電話を切ってベッドに放り投げる 「好きで飲んでるワケじゃないわよ……まったく」 わかっている 本当は誰よりも父が心配してくれている事を わかっているが蓮は父をまだ どこかで許せずにいる さぁ 出掛けよう 本当は何処にも行きたくないが ホテルをチェックアウトした後、夜の飛行機まで時間を潰さねばならない 窓から運河を見下ろすと さっきの大きな運搬船は器用に橋をすり抜けている とりあえず、街をぶらぶらするしかなさそうだ あぁ……みんなにお土産買わなきゃいけない もう一度 運河を見るとすっかり船は通り抜け ゆっくりと 跳ね上がって折れていた橋は元の形になろうとしていた
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