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そんなことより、やはり集中している時間と言うのは時間を忘れてしまうわけで
気付けば、もう深夜の2時を回っていた。
無駄金を払ったにも関わらず、さらに僕の時間まで掻っ攫おうと言うわけか。
「…………っ」
戸棚に手をかけ、立ち上がろうとする僕を、強烈な立ちくらみが襲う。
活字の見すぎと、同じ体勢のまま動かなかったことが原因だろう。
深く息を吐くと、小説の読みすぎにより特注で買わなければならなくなった眼鏡をかけ直す。
そして、薄いカーディガンを羽織り、振り返る。
「ちょっと風にあたって来る。」
そう僕は、誰もいない家に言った。
家にはペットはおろか、親さえいない。
べつに親が事故で亡くなったとか、そんなラノベのようなことが起きたわけじゃない。
上京して一人暮らしをしている。
ただそれだけだ。
夏と言えども夜は冷たい風が吹いていた。
汗ばんだ身体に風が染み、ぶるりと体を震わせた。
「さすがに冷えるな……」
風にあたると言ったにも関わらず、わずか30秒ほどでアパートへ戻ろうとする僕の目に、何かが映った。
あれは……変態か?
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