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「えっと……」
拝殿の縁に座った、地味な色合いの着物に身を包んだ少女が、そこに居た。
歳は、十代の半ばを少し過ぎた辺りだろうか。多分、僕と同じくらい。前は目上できっちりと切り揃えられ、後ろは背中をすっかり覆ってしまう黒髪を揺らして、何だか不貞腐れたような顔をこちらに向けてくる。
「君は、誰?」
「神様よ、カミサマ。貴方がたまぁー……にお賽銭を入れては好き勝手に境内をうろついているこの神社の、神様」
……やけにお賽銭を気にする神様も居たもんだ。随分狭量なことで。
とはいえ、そんな言葉を信じるわけもなく。僕は少しだけ訝しむような視線を向け――次に背を向けた。今日はもう帰ろう。
「あ、ちょっと! 待ちなさいよ!」
「何か用かな、神様」
「あんた絶対信じてないでしょ! というか信じてない、この不信者っ」
それはまあ、信じているわけがない。神様って、空想上の物だし。居たとしても、こんなみすぼらしくて威厳のない神様なんて、信じられない。
「……だって、誰もお参りに来てくれないから、服だってこんなのしかないんだもん。威厳だって、もっとちゃんとした服を着てたら……」
うー、と恨めしそうに僕を睨み付ける自称神様な女の子。そんな顔されたって、僕にはどうしようもない。反応に困ってしまうだけだ。
それにしても、どうしてか僕の心情は見透かされているらしい。僕が顔に出しているのかどうかはともかく――ここまで的確に言葉を返してくるということは、少なからず他の人とは違っているのかもしれない。
だからって、短絡的に神様だと認めるわけではない。直感が鋭い人なんて、幾らでも居る。彼女だって、その部類だろう。
「なぁんか、すっごく失礼な人ね、貴方って。それじゃまるで、私が神様神様って自称するだけの変な子みたいじゃない」
「うん、そう思ってるよ。凄い、流石神様! 僕の考えていることが分かるんだね」
「あからさまに持ち上げられたって嬉しくないわよ、この不信者! しかも先に私の言葉を認めてるじゃないの!」
「あ、そうだね。ごめん。君のこと、正直とっても変な子だと思ってる」
「だからって口に出してまで私を貶めるんじゃないわよっ、性悪不信者!」
人のことを不信者不信者と、随分な物言いだ。しかも性悪だなんて心外な。ちょっと反応が面白くて、弄っていただけなのに。それ以外は少しだって他意はない。
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