一章

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 神罰ってどんなことするんだろう、なんて少しだけ気になるけど、何だかこめかみに青筋浮かべて本気で怒っているみたいだから、苦笑しつつ謝る。 「まあ、そんなに怒らないでよ。それに心が読めるんだったら、僕が何を考えてるのかくらいすぐ分かったでしょ?」 「あっ――も、勿論分かってたわよ!」  化けの皮が剥がれてきたなぁ。始めから神様だなんて信じてなかったけど。ああでも、僕がからかってることは見抜いていたし……もしかしたら、あんまりお土産に気が向いていて忘れていたのかもしれない。 「そっ、そんなことないわよ!」 「そうやって必死に否定してくるところがまた怪しいんだけどね」 「良いからさっさと渡しなさい!」 「はいはい」  これ以上焦らすと本当に何をされるか分からないので、彼女が座っている縁まで歩いていく。隣に座って、袋から出したアイスモナカをその小さな手に渡した。 「あいすもなか、って冷たいのね。……というか、何で隣に座ってるのよ。しかも当たり前のように無意識で」 「うん? だって、立って食べるなんて行儀悪いじゃないか。やっちゃんに渡すためにここまで来たんだから、どうせならここに座って食べた方が良いでしょ?」 「……一応私、神様なんだけどね。それなのに貴方は敬語はおろか、私と同じ場所で食べようだなんて」 「気にしない気にしない。それに僕、君のことは友達だと思ってるから。神様だとか何だとか、関係なくね」  僕の、何気ない言葉。それを聞いて、少女は驚いたような顔を浮かべた。次の瞬間には顔を背けて、それを隠すようにアイスモナカに齧り付く。  どうしたんだろう、なんて思うけど、聞かないことにする。本当に心を読めているんだったら、口にしなくても彼女は答えてくれるだろうから。そうしないということは、言いたくないことなんだろうし。無理に聞こうとして、それこそ神罰なんて下されたくない。 「……変なところで気を使うのね」 「そうかな。多分、誰だってそうするよ」  もそもそとアイスモナカを咀嚼しながら呟くように言った彼女に、そう返しておく。どうやら、僕の心境はしっかり把握済みらしい。 「ところで、お供え物のお味はどう?」 「んっ――美味しい、かも」 「そっか」
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