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「嘘つけ、おっさんが」
顔がくしゃあっと歪んでいる。顎だってしゃくれてる。
「絶対タメじゃないだろ! 年齢詐称すんな」
「お前が落ち着きないんだよ。ガキか」
年上にしか見えなかった大槻さんが、割と若作りな高岡さんを馬鹿にした口調で挑発。
それからはしょうもない泥仕合になって皆で大笑いしていた最中に、ふと日頃からの疑問を思い出す。
「あの――そういえば」
「?」
「皆さんのお仕事って何ですか?」
一瞬の間があって、
「警備会社っスよ」
腕を組んでソファへもたれた土屋さんが答えてくれた。
「たまには皆で気分転換に行こうってなって、休みのメンバーでツーリングしてたんです」
「そうなんですか」
長塚さんが鍛えてるのも、男性陣のこわもて率が高めだったのも納得。
……失礼かな。
「槙さんや上杉さんも同じ業務されてるんですか」
「私と上杉は内勤なの」と言って微笑む槙さんに、
「でも腕っ節はハンパないスよ」
「土屋君?」
「すみません」
槙さんに軽く睨まれて首をすくめた土屋さんが嬉しそうに見えたのは……うん、気のせいじゃなさそう。
だって、鼻の下伸びてるもん。
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