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「愛ちゃーん」
お店のドアを開けながらカウンターの内側にいた愛さんに呼びかけた槙さん。
何事、という表情で顔を上げた愛さんも、こちらを見た途端に破顔した。
「薫さん? お久しぶりです」
「ホントねー。元気そうね」
カウンターを挟んで美女二人が並ぶと、まさに目の保養。眼福の極み。
ただ、ちょっと状況を飲み込めないまま行方を見守る体の上杉さんが気になる。
「ええと」
人見知りは、実に辛い。
「このお店、長塚さんの妹さんの店なんです」
「え、あのかた、妹さんなんですか?」
驚いた様子で私を見た上杉さんは再び前へ顔を向け、
「……美人ですね……」
「私もそう思う」
上杉さんへも「今晩は」と微笑んだ愛さんは、
「唯ちゃん、珍しい顔ぶれだけど。一体どうしたの?」
「ええとですね……」
「ああ、私がお話しましょって誘ったの。柏木さんとは初対面だし、男性がいたらしにくい話もあるし」
「じゃ、急遽?」
「そ。夜会よ」
一体、どうなるのやら……。
今、店内にいる女子四人中の三人が美人という閉店間際の"Ebony&Ivory"で、とんでもない夜会が始まろうとしていた。
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