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「彼と会うのは、時々?」
「今日、久々に呼び出されて」
紅茶を口に運ぶ。渋くなくて深い味わいの、美味しいお茶。
「今回はおよそ一ヶ月ぶりです。以前はもっと逢えたんですけど」
「彼、部署が変わったばかりで忙しくしてるわ」
隣で上杉さんが頷いている。
「そうなんですか……」
「うん?」
小さく唸った槙さんが、一瞬探る眼をした。
「その様子じゃ二人とも、連絡は密に取り合ってなかったみたいね」
今の言葉……痛い。
「でも夜勤があるから、柏木さんから連絡しにくいでしょ?」
槙さんが出したフォローに、ただ頷くしかない。
声だけでも聴きたい夜もあった。
だけど、それだけじゃ彼に悪い気がして電話できない。
――圭吾ったら、と、ため息混じりにつぶやく声が聞こえた。
槙さん、今、彼を名前で呼んだ?
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