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「……」
紅茶を一口飲んだ上杉さんの唇から小さなため息がもれて、
「絶対……内緒にしてくださいますか?」
「もちろん」
すがるように見つめてくる瞳から目を逸らさずに、頷いた。
「本人に想いを伝えるのは上杉さん自身じゃなきゃ、駄目だもん」
そんなこと言ってる私なんか告白される一方で、都度真っ白茫然の体たらくだったんだけど……ね……。
「貴女が望まない限り、そんなことしないわ」
静かな口調の槙さんにも口外しないと言われて、上杉さんはようやく踏ん切りがついたみたいだった。
「相手は……ご想像の通りです」
「大槻さんか……」
真っ赤になったまま、上杉さんは沈黙で応えた。
小柄な上杉さんと、巨漢の大槻さん。
身長差を想像しただけでも、きゅんきゅんする。
「彼なら頼もしくて、いいじゃない」
槙さんも微笑している。
「で、まだ言えてないのね」
「言えません」
恥じらいに潤む目を見張って強く言い返した上杉さんは、小さく「すみません」と謝った。
「でも、……言える……勇気ないし……」
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