ワケあり?

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そんな彼女の背後では、愛さんがにこにこしながらグラスを片付けている――今、全神経を耳に傾けているに違いない。 私はやがて苦笑いしそうになる頬をもう片方つり上げて、笑顔を作った。 「……彼が気になった理由、訊いていいかな?」 この時、隣の槙さんが一瞬真顔になったのを目の端で見てしまう。 ……私、何かマズいことを? すると上杉さんは、 「……今は同じ班にいるんですけど、その前に一度、すごくお世話になったことがあって」 「それから、今まで……」 「はい」 上杉さんは長い睫毛を伏せた。 「大槻さんって一見怖そうじゃないですか。でも、お話したらとても優しいんです。……多分……その差が気になってったのかなって、思います」 優しさが想いを育む……。 やん、素敵過ぎる。 「私が見る限りでも、大槻君はいつも貴女に優しいものね」 槙さんの証言が事実なら、よっぽどだ。 「上杉、言ってみたら? 多分彼も好意を持ってると思うわよ」 「――……」 上杉さんがまた真っ赤になった。
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