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何だろう。
久しぶりの夜が、こんなに落ち着かない……。
先に階段を上がりながら、無意識に歌を口ずさむ。
You can believe when I say…
「今の、誰の歌だっけ」
げ、聞こえたみたい。
「さあ」
「雰囲気としては、'90sだな」
鋭い。
つい歌いかけたのは、B・コールドウェルの『without your love』。
年代は確かそのくらい。
笑みを作って部屋へ逃げ込んだ私は着替えを掴み、ドアを施錠していた彼に訊いた。
「お風呂、借りていいですか?」
腰に手を当て、ため息混じりに口を開く長塚さん。
「一緒にどうとは訊かないのかい、柏木君」
「体に自信があれば誘いますけどね」
薫さんみたいにグラマーだったら。
……それにしても、どうしたのかな。
理由はわからないけど、彼と二人きりの空間にいたたまれない。
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