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「んー……」
悪くない、と、バイクにかけたカバーを掴んだ時、朝日を見に行こうかとも躊躇した。
でも早起きはきついし、日が昇ったあとに暑い思いをしながら帰るのも辛いなあと思い直してカバーを外し、キーを回す。
――さて、今日は何回でかけられる?
そんなことを考えながらデコンプレバーに指をかけ、キックアームを蹴り下ろす。
……結果は二回。
湿気がないこともあってか、買って数ヶ月のバイクのエンジンは気持ちよさげに音を立てている。
こんな時間から遠くに出かけるのは初めて。
しかもソロだ。
わくわくする。
シートに腰かけてメットのストラップを留めていると、駐車場に車が入ってきた。
あの銀色のトヨタの車は、私の部屋の真上、202号の真下さんのものだ。
五つ年上の真下夫妻とは、普段から仲良くさせてもらっている。
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