第三章 ―友達―

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 力の操作を見る試験って事は、全く操れてない今の状況のオレは採点する余地もないって感じだな…。  確か…力の操作が未熟な奴は格闘面を評価されるって話だけど、開錠者に拳で立ち向かうのはいくらなんでも無謀過ぎるし…。 「そのテストで降参とかした場合、どうなるんですか?」 「当然、未評価なために成績は低く付けられる。まぁ、他の科目と違ってテストを受けなくてもそいつの事情とかが考慮されるから、成績5段階中の『2』になるな」 「じゃあ、『1』にはならないんですね?」 「ああ。今回は仕方ない、転校してきた時期が悪いからな。こうなれば降参するしかない」  オレもそれに賛成だ。  そうか、受けなくても最低評価をされる訳じゃないのか。それを聞いて安心したぜ。  たまらずため息を吐き出して安堵するオレに、 「鳳、別に降参しなくてもいいんじゃないか?」  突然、太一がそんな事を言ってきた。 「…なんで?」 「勝たなくてもやる気見せりゃいいんだからよ、やるだけやれ!男ならガツンと拳でぶつかれ!」 「水上、誰が喋っていいといった?」 「すんません!」  椿先生の一睨みにより、太一は即効で大人しくなった。 「開錠者に生身の人間が勝負を挑むのは自殺行為だ。お前も鍵使いの端くれならわかるだろ、そんな事を軽々しく言うな」 「うっ……すんません」  割とマジな説教だ。太一も今度は真剣に謝罪した。
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