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「他の奴らも、いまどき弁当持ってきてないんし。
第一母親の弁当持ってるだけで、男からは[まぁ、愛妻ならぬ、愛母弁当(笑)]って言われるし、
女子からだって[マザコン?]ってからかわれるんだよ!
とにかく、いらない」
靴紐を結び終えた僕は無表情のまま母を省み、
僅かに赤いバックを見た。
「でも~…」
まだ反論しようとする母に、怒りのままに
「うるさいなぁ!
いらんったらいらん!」
母さんなんて、大っ嫌いだ!
思わず口にしそうだった最後の一言は、出かけた言葉を苦々しく飲み込んだ。
そのまま思いっ切り玄関ドアを閉めた。
ドアが閉まる間の僅かに見えた母の姿は、
悲しそうな目をしていた。
僕は、
この時の母の姿を幾度となく夢に見る事になるとは、思いもしなかった。
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