【犠牲と奪還】

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罠の部屋は通路の一番奥にあった。 両開きの扉。 人が一斉になだれ込めそうなほどの大きさだ。 とりあえず引いてみる。 ……っ、駄目だ。 僅かに動いただけで手応えがないに等しい。 一人では時間がかかりそう。 「……すみません、誰か手伝ってくれませんか!?」 「よし、じゃあワシが」 「ありがとうございます」 田中さんと二人で扉を引っ張りにかかる。 「あっ、もう少しです! 頑張ってください」 「ぐぬぬぬぬっ!!」 扉が開ききった。 ほっと一息。 すると…… 「おい、おめえら! 核が動き出した! 中へ急げっ!!」 杉浦さんのこんな声が聞こえてきた。 なんだって!? 私は驚き今走ってきた通路を見る。 ……! 「――っ!?」 これはマズイ。 核がゆらゆらと体を動かしながら、こちらに近寄って来ているではないか! 「ふふ……うふふ……逃げても無駄……無駄……無駄なのよ? アハッ……」 ガクッ、ガクッと肩や膝、頭を不気味に揺らしながら核はやってくる。 ――怖い。 その姿は人間の動きとはかけ離れたものだった。
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