【犠牲と奪還】

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どうしたんだろう? 少し様子が変だ。 「……あの、田中さん?」 私の声にハッとし彼は肩から手を離した。 「ぬ、なんでもない。それよりもあそこ! 人がいっぱいいるぞ」 「えっ?」 言われて目を向けた先。 そこには沢山の人が檻の中に捕らわれていた。 あっ……! 中には見慣れた顔がチラホラ。 あそこにいるのは尚美さん。それにあっちは内藤さんと宮沢さんが――! 「ありさ、内藤さんっ!」 二人を見つけた翼君が素早く駆け寄る。 だが、間近まで近づくことはできない。 「イタッ!?」 彼は何かにぶつかり頭をおさえる。 どうやら檻の前に見えない壁があるみたいだ。 「なんだよ、これ!」 すると、翼君に気づいた二人が駆け寄ってきた。 口の動きから見るに、私達に対して何かを喋っている様だがこちらには一切聞こえない。 つまり、反対に私達の声もあちら側には聞こえないんだろう。
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