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どれぐらい歩いたのか分からないけど、紘一とはぐれてしまった。
ちょっと落ち着くには一人になりたかった。
ダメだなぁ。
紘一がモテるのは知ってし、悪気はないんだって分かるんだけどね。
いけない、いけない!
またダークサイドに落ちそうになっていた。
たまに1人で落ち込んで、1人でいじけて、勝手にダークサイドに落ち込んじゃう悪い癖があるんだ。
紘一にしてみたら訳が分からないよね。
謝ろう!
せっかくのバレンタインデー、チョコは渡せなくてもデートを楽しめばいいじゃん。
紘一にとって、もらったチョコは単なるチョコでしかないんだしね。
僕は慌てて来た道を引き返そうとした。
「苓!」
大好きな声がしたかと思うと、大きな温もりに包まれた。
ほっとする匂いと体温、ぎゅっと力を込めて抱きしめられると、さっきまでの苛立ちはあっという間に消えていった。
「心配するだろ? 勝手に俺から離れるな」
乱れた息、うっすらと汗が滲んでいる顔がセクシーだなぁなんて思っちゃった。
すっぽりと僕をその大きな腕の中に収め、ちゅっと額に何度もキスをする。
ここが人通りの多い繁華街の通りなんて気にもしない紘一、周囲が冷やかすように遠巻きに見ているのに気付いていないのか、僕の唇にキスをしてきた。
「こっ、紘一」
紘一は平気だろうけど、俺は恥ずかしい!
強引に紘一を押しのけ、真っ赤な顔で睨みつけた。
「苓、可愛いだけだから」
クスクス余裕の笑みを浮かべる紘一、なんか悔しい!
「あっ、チョコは?」
「ん? チョコ持ってたら苓を抱きしめられないからな」
にっと笑われた。
もう、その笑顔に僕はやられるんだ。
紘一、大好き!
僕は歩き出した紘一に後ろから飛びかかるように抱きついた。
その拍子にこそっとチョコを紘一のコートのポケットに滑り込ませた。
僕の手作りチョコは、愛情たっぷりてんこ盛り、特別でスペシャルなんだからきっと紘一は喜んでくれるはず。
真夜中、僕からのチョコに気付いた紘一が、熟睡していた僕をたたき起こすように家に押し掛けてきて‥‥、
2回目のバレンタインデーは甘々な感じで終わっていった。
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