いつかの夏祭り

4/8

195人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
金魚すくいで苓は大格闘の末一匹救い出し、射的は全く的に当たらず悔し涙を流し、綿菓子を自分で作ると駄々をこねた挙げ句、たこ焼き屋の兄ちゃんに色目を使い(本人自覚なし)奢ってもらう代わりにキスされそうになり、俺がトイレに行ってる間にナンパされ連れて行かれそうになるという、とっても忙しい祭り見物に俺は振り回されて疲れ切ってしまった。 俺より2歳年下なんだ。 だから苓はまだまだお子ちゃま、いや、そこが可愛いんだけどね。 やんちゃ坊主っぽくてなかなか素直に甘えてこないが、たまにデレてくれたりなんかするから、俺はすっかり苓の虜なんだけど、他の人まで虜にするのはやめてほしい。 苓の相手は俺一人、これまでもこれからも、生涯俺一人なんだから、ムダに周囲を煽らないでほしい。皆が可哀想だから。 苓に向けられる視線をことごとく牽制しながら、ついでに俺に向けられる熱い視線には微笑みを返していく。 まぁ、俺も大概モテるから。苓と付き合う前は毎日いろんな人に突っ込んでたからな。勿論、今は苓専用だけど。 「むぅ、紘一、また浮気した!」 ペシッとほっぺたを叩かれた。 苓のヤキモチは分かりやすくて可愛い。 「苓しか見えてないよ」 あぁ、俺、キャラ変わったよな。こんな甘いセリフ言うガラじゃなかったのに。吉成に笑われるはずだ。 .
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

195人が本棚に入れています
本棚に追加