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「苓………」
ガラリと変わったリビングに、声を失うくらい驚いてくれた紘一、この一週間頑張ってよかったぁ。
「苓、おいで」
濡れた髪を乾かそうともせず、ソファーに座り自分の膝をポンポンと叩く。
僕いそいそと紘一に近付くと、ぐいっと手を引かれ紘一の膝に倒れ込む。
あっという間に対面で紘一を跨いで座り込んでいた。
「今日はいろいろありがとうな、苓。すごく嬉しい」
チュッとキスをしてくれる。
「メリークリスマス!」
気恥ずかしくて、僕はそう言った。
「メリークリスマス、苓。二人で暮らし始めて最初のイベントだな」
紘一も気づいてくれてたんだ。
じわじわと熱いものが込み上げてくる。
「いつもみたいに苓を帰さなくていいのが嬉しいよ。こうしていつも苓が俺の腕の中にいる。苓、俺は今、すごく幸せだよ」
甘いケーキよりも甘い紘一の言葉、
「僕も紘一が好き」
顔が真っ赤になっていくのが分かる。でも言葉にしなきゃ伝わらない事があるって紘一が教えてくれたから、僕はテレるけど素直な気持ちを口にしようって思ってる。
日本に残るって決めたのは自分なのに、毎日が寂しくてたまらなかった。不安で怖くて頼りな くて、そんな僕を見つけ支えてくれた紘一、大好きでたまらない愛しい恋人。
親の敷いたレールの上を走るだけの人生から逃げ出してきた紘一、
僕は紘一に救われたけど、僕は紘一を救えているのだろうか。
「好き、大好き」
紘一にしがみつくようにぎゅっと抱きつきながら、何度も好きって伝える。
「俺もだよ。大好きだ、苓。だからずっと俺といてくれ。この先の人生を俺にくれないか?」
「えっ?」
「苓がいなくなるなんて考えられない。ずっと、ずっと俺と一緒にいてくれ。俺だけを見ていてほしい」
突然の言葉に僕はただ驚いて、間抜け顔で紘一を見上げている……と思う。
「ずっと?」
思わず確認してしまった。
「ああ、ずっとだ」
「紘一の隣りにいていいの?」
「……………」
ちょっと思案げに黙り込まれた。
驚きから喜びに変わりつつあった気持ちが、一気に萎んでいく。
隣りにいちゃあダメだったんだ。
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