195人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
紘一の顔を見ていられなくて、僕は視線を外す。
「苓」
下を向いたままの僕の顔を上に向けさせる。
自然と視界が歪んでくる。
紘一の隣にいられないなんて考えられないよ。
紘一はちょっと困ったような顔をして、
「苓、ずっと隣りにいてほしいけど………」
「けど………?」
もう僕の涙は溢れる寸前、ぎゅっと紘一のTシャツの裾を握り締め、次に続く言葉に構えた。
紘一はニヤリと笑って僕にチュッとキスをした。
「夜は隣りじゃなくて、俺の下にいろよ。まぁ、たまには上もいいな」
「なっ………!」
一気に顔が赤くなる。
本気で隣りにいれなくなるかもって心配したのに! からかうなんて酷い!
「とりあえず、今からは下だな」
怒りに震えている内にあっさりとソファーに押し倒された。
「明日から冬休みでよかったよ」
「なんで?」
嫌な予感しかしないと言うか、答えは分かっているんだけど、とりあえず聞いてみた。多分顔は引きつっていたと思う。
「朝までコースだから」
当たり前だろと言う顔をして、あっさりと言われた。
「ずっと一緒にいてくれるんだろ?」
僕は大きく何度も頷いた。
「じゃあ、苓は俺の嫁さんだ な」
「嫁?」
「そう。可愛い可愛いお嫁さん。だから旦那様としてはいっぱい愛してあげなきゃいけないだろ?」
「うぅ……」
「苓、愛してる」
愛してる、それは魔法のような言葉。
心が幸せで満たされていく。
近いてくる紘一、僕はそっと目を閉じた。
この幸せがずっと続く事を願って……。
.
最初のコメントを投稿しよう!