僕と先輩

3/12
前へ
/25ページ
次へ
そんな紳士的な気持ちが暴走して手が付けられなくなり……今日に至るというわけだ。 告白する場所は既に決めてある。というか、先輩と二人きりになれる場所はそこしかない。 必然的に、僕は文芸部の部室に向かう。 放課後になると先輩はいつも部室で本を読んでいる。部員は他にもいるけど、いわゆる幽霊部員というやつなので気にする必要はない。 クラスのみんなが部活に向かう中、僕は夏服をはためかせて走る。思い切り爽快に走った。 暑い空気の中。今日を逃せばおしまいだという、訳の分からない強迫観念が押し寄せてきて。 やはり僕は、見えない何かにつき動かされて走る。 一歩進むごとに胸の鼓動は高鳴り、しかしそれは不安によるものではなく、希望と期待によるものだった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加