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刹那、瓦礫が崩れる音がけたたましく響く。
「――っ!?」
青年は突如瓦礫から伸びた手によって引き倒され、仰向けになったのだった。
しかし彼の視界を覆うのは蒼天ではない。
「ふーっ、ふーっ……!!」
男であった。その者の目は血走り、髪はボサボサ、鼻息荒く空気と唾液が穴だらけの黄ばんだ歯からとめどなく漏れ出ている。
一言で形容するならば、獣。血に飢え、肉に飢え、今まさに獲物を食らわんとする野獣。
それが青年に襲いかかった。
男は完全に青年の上に馬乗りとなり、ヌラリと鈍く輝く一本のナイフを天高く振り上げる。
「死……ね……!!」
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