第1章 中2の春

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「リネ、昨日は傘ありがとな」 いつの間に来たんだろう? さっきまで、居なかったのに。 今は2時間目と3時間目の間の休み時間。 私の前の席で笑うマキ君。 読みかけの小説から視線をマキ君へと移す。 「どーいたしまして」 「借りた傘、傘置き場に置いてるから」 「わかった」 「それと‥‥」 マキ君は鞄の中から、あたし好みの、可愛い便箋を取り出して、それを、あたしの机の上に置いた。 「傘のお礼」 「いらないよ、別に」 「ダーメ!!強制的にそれはリネの物だから」 ニカッと無邪気な笑顔を見せる彼。 「開けてみて」 ‥‥渋々開けると、 「‥‥‥‥」 中身はノートの切れ端ばかり。 それには、何か書かれている。 「‥‥肩叩き券10分、家庭教師券1週間、荷物持ち券1週間‥‥‥何これ?」 「その券を使えば、それに書いてあること全部俺がしてやる」 本当馬鹿みたいに無邪気な笑顔を、あたしに向けるマキ君。 「別にいらないよー‥‥‥前売り券?」 馬鹿みたいな事が書かれてる、白黒のノートの切れ端の中に、2枚混じっていたカラフルな券。 それは‥‥ 「その小説、来月映画公開でしょ?」 あたしの読みかけの小説の映画の券だった。 「ちなみにその前売り券は、これと対になってるから♪」 マキ君はあたしの手元にある、 "デート券" を指差した。 「え!?‥‥‥‥」 「でも、リネが嫌なら使わなくてもいいから!!お礼だからね」 それだけ言って、マキ君はクラスの友達の輪に入っていった。 本当、なんて言うか、優しいんだけど、やっぱり自信家だな。 とか思ったのは内緒。
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