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「くっそ…何でこんなベタな遅刻の仕方しなくちゃならねぇんだ!!」
朝の午前8時30分。
冬も過ぎ、多少の雪が残る初春の通学路を俺は、口に食パンを加えて走っていた。
全ての原因は、そう。
目覚まし時計が、何故か7時に鳴らなかった事だ。
(※鳴っています。)
唯一の救いは漫画みたいに曲がり角で誰かと出くわさなかった事か。
もし出くわしたら俺にとっても、相手にとってもイヤすぎる。
「キャー、遅刻遅刻ぅ~!!」と食パンを口に挟みながら走ってる男子生徒とぶつかるシチュエーション。
そんな出来事を一体誰が喜ぶと言うのだろうか。
校門前の長い登り坂を全力疾走で登りきり、ようやく見えて来た念願の校舎!
そこには、今にも門を閉めようかと、正門の柵に手を掛けた体育教師の姿が!
俺は決心した!!
今まで以上に地面を強く蹴り、身体を宙で水平に傾ける!
「間に合ぇぇぇえええ!!」
徐々に距離を失って行く、柵の壁の間目掛けてヘッドスライディング!!
後もう少し…!
3…2…!!
「あ、遠咲。お前、遅刻な」
最後に聞こえたのはその体育教師の一言。
無情にも最後の最期に閉められた門。
滑り込みに失敗し、見事に緑色の鉄製の柵に頭部を激しくブチ当てた俺は、そのまま意識を暗闇の世界へ手放したのだった。
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