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空がもう赤い。
もうすぐ夜が来る。
金曜日の夜は響子に優しかった。
響子の家は市街地から離れた住宅地の外れにある。家の後ろには大きく、広大な裏山がある。先祖代々守ってきた山だと、そう教えられてきた。
響子はその山が好きだったが、おかげで夏は虫がたくさんわいてきた。蚊をはじめカメムシやら蟋蟀やら蜘蛛まで…夏は悲鳴と殺虫剤の臭いが部屋を満たす。大概の女子同様、虫は大嫌いだ。
響子は窓から家の前の道路を見つめた。
「…いない。」
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