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「・・・でかくね?」
思わず呟く天翔にあずまは雪玉を見上げる。
「…なぁこれ、どうやって頭作って乗せるんだムサシ。」
「俺もこんな大きいの始めて作ったから分かんない。」
「…梯子持ってきましょうか。」
セレが苦笑して梯子をとってくる。
「さぁ、乗れ?天翔。」
「やっぱり俺か!」
うっすら予感はあったが当たっても嬉しくもなんともない。
「お前に力仕事以外に人の役に立てる価値があるか?安心しろ、梯子は私が支えててやる。」
そういって微笑むセレだが目が笑っていない。
「安心できねぇぇ!Σ 死因:落下死とか洒落にならねぇよ。」
「お前にそのくらいで死ぬ可愛げがあるか。」
セレの言葉に肩を落としながらも律儀に梯子を上りはじめる天翔に、あずまが頭部になる雪玉を渡す。
それを器用に片手で持ち、梯子を上った天翔は巨大な胴体の雪玉の上にそれを置いた。
「よし、これで完成だな。」
梯子を降りて見上げれば、巨大な雪だるまが出来ていた。
「すごい、おっきい!」
歓声をあげるレオンにセレが笑う。
「よかったですねレオンくん。」
「・・・・何だこれは。」
後ろから聞こえた声に振り向けば、着替えてきたのだろう元光が立っていた。
目の前の雪だるまを見上げてぽかんとしている元光に、あずまが内心でガッツポーズをする。
どうやら驚かせることに成功したようだ。それにしても。
「着替えだけにしては随分遅かったな?」
あずまの言葉に元光は眉を寄せた。
「先程の服は僕の敬愛するバース様が下さったものだ。早々に乾かすに決まってるだろう。」
元光の怒ったような声にレオンがおずおずと元光の前に立つ。
「ご、ごめんなさい。怒った・・?」
しょんぼりとしたレオンに元光は言葉に詰まった。
「べ、別に怒ってない。これからは気をつけろ。あと、その、雪だるますごいな。お前が作ったのか。」
慌ててレオンを褒める元光にセレが小さく微笑する。
彼の上司兼養い親であるバースがここに元光を預けたのは、レオンと接することで元光に子どもらしさを取り戻して欲しかったからだろう。
確実にそれは功を成している。
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