0人が本棚に入れています
本棚に追加
二人のやりとりを他所に、バットの部屋の前にきたセレはその戸をノックした。
「バットさん、いらっしゃいますか?」
返事はないが、気配は確かにある。
「いらっしゃるなら返事なさって下さい。」
「……何のようだ。」
むすっとしたような声で返事するバットにセレは溜息を吐いた。
「レオンくんが大きな雪だるまを皆で作ったので見て欲しいそうですよ。」
「お前らが見てやればいいだろう。」
素っ気無いバットの返事に、今度はバットに聞こえる音量で溜息を吐く。
「レオンくん、貴方に見てもらいたいんですよ。拾って名前までつけたの貴方でしょう。
レオンくんも貴方に一番褒めてもらいたいんですよ。なのに来て下さらないなんて…。あぁ、薄情な人に拾われてレオンくんも可愛そうに。」
白々しいセレの言葉にバットは額に青筋を浮かべながら椅子から立ち上がった。
「~っ行けばいいんだろう行けば!」
「はい♪」
打って変わって軽やかな声になったセレに先程まで読んでいた本を顔面に叩きつけたくなる衝動を堪えて外套を着る。
セレが扉の前に立っているのを承知でいきおいよく外開きの扉を開けると、予測していたのかひらりと後ろに避けたセレが、にこっと笑う。
「さぁ、行きましょうか。」
バットは思い切りセレを睨みつけてから足音荒く庭に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!