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「もうこんな時間ですか・・。」
セレが腕時計を見ながら苦笑する。
あずまもそれを覗き込むと、既に2時をまわっている。
「うわ、まだ昼飯食ってないのに。」
どうやら雪遊びに夢中になりすぎたようだ。
いい年にもなってと少し気恥ずかしい気もするが、レオンが楽しそうだったからいいかと苦笑する。
「ご飯用意しますから、皆さんはシャワーでも浴びて下さい。」
ぐっしょり雪まみれになったあずま達を見てセレが笑う。
セレ自身はバットを呼びに行く際に着替えを済ませている。
「ああ、そうだな。風邪引かないようにレオンもちゃんと着替えるんだぞ。」
「うん!」
あずまの言葉に家に入ろうとして、レオンは後ろを振り返った。
皆で作ったカマクラと、雪だるまが仲良く並んでいる。
今までずっと独りで過ごしてきて、寒くて辛くて痛くて。
でも、この場所はとても暖かくって。皆と過ごすのはとても楽しくて。
レオンは、まだ降り続けている雪を見上げた。
「どうしたレオン。早く入らないと風邪をひくぞ。」
バットの問いにレオンが笑う。
「うん。あのね、僕ね、雪大好き!」
バットはその言葉に一瞬目を丸くしたかと思うと、次いで彼には珍しい微笑を浮かべてレオンの頭を撫でてやった。
感情が人より希薄な自分でも、レオンとなら感情を共有できそうだと空を見上げる。
――まるでそんな二人を優しく包むように、ゆっくりと降る雪が辺りを銀色に染めていった。
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