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「……日向ぼっこ…?」
思わず聞き返してしまった俺に不良は初めて目を向けた
目が合った瞬間、時が止まったかのような感覚に陥った
俺は知っている
まるで世界の何も映していないかのように真っ黒な瞳
全てを諦め、人生に失望した人がする瞳に俺は冷や汗が流れた
確かに目は合っている
だがそこには俺は映っていない
「……そ……日向ぼっこ」
無表情に言う不良を、闇に呑まれた瞳を見て唐突に、なんとかしなければと思った
「……臭くない?」
「……………臭ぇよ?」
「……お風呂入る?」
「……………動けねぇ」
全身傷だらけなのだから当たり前だ
鞄を持ちながら多分自分よりデカイであろう不良を部屋まで運ぶのは無理だろう
そう思い不良をそのままに一度部屋に戻った
そこで一気に緊張の糸が切れた
「はぁっ……俺…何してんだろ」
他人なんかどうでもいいじゃないか
しかも相手は不良だ
何も良いことはないじゃないか
だがそれでも、無視できない何かが俺の中にはあった
風呂に湯を溜め、不良のいるゴミ捨て場に戻るべく部屋を出る
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