1.悪魔

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昔々。 体の弱い男の子がいました。 足も悪く、いつも部屋に篭り切り。 外の世界に夢を描き、胸の痛みに絶望を繰り返す。 そんな悲しい悲しい男の子でした。 男の子の友達といえば、窓枠に泊まる小鳥ぐらい。 ある日男の子は言いました。 「友達が欲しいな」 小鳥は首を傾げるだけでした。 次の日、小鳥はまた窓枠に泊まっていました。 男の子は言いました。 「友達が欲しいな」 次の日も、その次の日も…… 次の日、男の子が目を覚ますと、窓枠に小鳥はいませんでした。 替わりに、一人の女の子が窓枠に腰掛けて笑っていました。 黒い髪、黒い瞳に黒いワンピース。 手には黒く分厚い本。 女の子は笑って言いました。 「お友達になりましょう?」 男の子と女の子はすぐに仲良くなりました。 女の子は色々な話を聞かせ、男の子はそれを楽しげに聴いていました。 次の日も、その次の日も…… 不思議なことに、その日から男の子の体調はとても良くなっていきました。 それはもう、外に出て遊んでいられるくらいに。 男の子の両親は神様に祈りが届いたと感嘆を漏らしました。 医者も、看護師も、奇跡だと言って手を打ちました。 男の子は言いました。 「友達が出来たからだよ」 しかし、皆その言葉に首を傾げます。 「そんな子がいただろうか?」 皆、気にすることはありません。 きっと天使様のことだろう、と……
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